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僕は、サッカーくじの問題を道徳面から論じるというのは不毛である
というふうに思っています。かけごとイコール犯罪という考え方は、明治時代に武士的な士族の
規範が一般化させられたときに生まれたものでありまして、必ずしも日本の伝統ではありませ
ん。そうすると、僕はサッカーくじに賛成がというふうに思われるかもしれませんが、そうじゃな
いんですね。
その辺をもう少し説明したいんですが、アルコール中毒患者が出ないように禁酒法をつくれと
いうふうなことを決めるのと同じくらいに、かけごとに対してただ禁止するということではおかし
いのであって、かけごとというのは、その運営に際してどういうノウハウがあるか、きちんとした
ノウハウを活用するか否かということにかかっているわけであります。
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先進国ではほとんどカジノというのは合法化されておりまして、そのかわり法規を非常に厳格
に定める。つまり、やみの部分に沈んでしまう犯罪というものを減らす、そういう前向きな考え方
をしていくわけですね。したがって、法規を厳格にどうするか、運営ノウハウをどうするか、ここ
に尽きるわけであります。
僕は、評論家の室伏哲郎さんとか幾人かと二年前にカジノ学会というのをつくりましてカジノ
のあり方を研究しているわけですけれども、阪袖大震災の直後にダイエーの中内会長が震災
復旧の財源確保にカジノを導入したらどうかというふうな発言をしておりまして、地域経済の活
性化に役立つとか、減税財源に充てられるとか、そういう意味での考え方ができるかどうかとい
うことなんですね。
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オリンピックの開会式で横綱曙が土俵入りをしたわけですけれども、既にイギリスでは相撲は
かけの対象になっているわけです。そういう意味ではもう相撲というのは一寸歩先んじて国際的
であるわけであります。アメリカでもラスベガスを初めカジノは盛んでありまして、州によって異
なりますけれども収益の一○%から二○%ぐらいは課税されるようになっておりまして、もう今
のラスベガスはディズニーランドのようで、昔のいわゆるギャングのいた時代と全然違っており
ます。ですから、どういう法律をつくるかということに尽きるわけであります。
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日本では刑法で賭博行為が禁止されているわけでありますけれども、パチンコや宝くじは例
外になっている。ところが、ギャンブルは結局各省庁が胴元になっているわけですね。普通だっ
たら民間で経営して、アルコールと同じように税金を払って、その税金が地域の活性化につな
がるというふうなサイクルがあっていいわけだけれども、日本の場合はそういうサイクルが閉じ
られているわけです。各省庁が胴元になっている。日本では宝くじを含めてギャンブルはとにか
く官営でなきゃいけないというふうに非常に偏っています。さらに、官営であるということはむし
ろ透明性が担保しにくい、そういうおそれがある。それが一番の問題だというふうに思っていま
す。
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したがって、既に御存知だと思いますけれども、農林水産省が競馬、特殊法人日本中央競馬
会、ほかに地方競馬がありますが、運輸省は競艇、特殊法人日本船舶振興会、通産省は競
輪、特殊法人日本自転車振興会、それからオートレースで特殊法人小型自動車振興会と、そ
れぞれ所管しておるわけです。これは一般会計と別にへそくり予算ができる仕組みになってい
ます。競艇も競輪も、非常に大ざっぱに言うと、特殊法人がおよそ六百億円を配分する権限を
持っています。
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この配分が適正に行われているか否か、だれがチェックするのか、極めて不明朗でありま
す。各省庁所管の社団・財団法人に助成金が非常に合法的に流れるというか、そういう仕組み
ができてしまっているわけですね。そのような社団・財団法人というのは大体天下り先でありま
して、したがってお手盛りで配分していくというふうに非難されても仕方ないというのが実情だと
思います。だから、どの団体が幾らもらっているかというリストを公表したがらないんですね。
僕は、自転車振興会に対してその点についてディスクロージャーを求めました。僕は文芸春
秋に「日本国の研究」というのをおととしの秋から連載しまして、十二月まで取材して書いてい
たんですけれども、その時点では、例えば自転車振興会のその配分のリストは公表されません
でした。その後、何度もしつこく行きまして、「日本国の研究」という本を出して、そしてこれを何
とかしろということを言いましたら、やっと昨年、自転車振興会の約六百億円の内訳ですね、ど
ういうところに配っているか、そういうふうにやっと配分先のリストが公表されたんですね。
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サッカーくじの場合も、一応年商売り上げ二千億円とかいろいろ予想されています。払戻金や
諸経費や国庫納付金を除いて、僕は詳しい数字は実際どうなっているのかわかりませんが、と
りあえず三百億円ぐらいが文部省所管特殊法人の日本体育・学校健康センターの手によって
スポーツ助成金として各団体に配られるというふうなことのようですね。つまり、これまた省庁を
胴元として特殊法人が運営するというパターンは、これは今までの運輸省、通産省その他のパ
ターンとまったく同じで、サッカーくじも例外ではないということです。
そもそも日本体育・学校健康センターというのは、長ったらしい名前ですけれども、日本学校
給食会と日本学校安全会がが統合されて日本学校健康会というのがつくられて、さらに国立競
技場と合併して日本体育・学校健康センターというのができたわけですね。これは特殊法人の数
を減らすというふうな話だったんですけれども、そういう長い過程の中で名前をくっつけていくと
長ったらしい名前ができちゃったと、非常に折衷的な名前になっているわけですね。
この理事長は文部省の初等中等教育局長の天下りポストであります。一応調ぺてみますと、
理事長のほかに文部省出身の理事の指定席というのは平均三人でありまして、大体国立大学
の事務局長の天下りポストになっております。それが日本体育・学校健康センターであります。
したがって、日本体育・学校健康センターというのは中立的な第三者機関ではありません。簡
単に言えば文部省の別働隊ということになります。助成金の配分というのは結局文部省がス
ポーツという分野に対して金も出すけれども口も出して人も出す、スポーツ界に強い権限を振
るう余地が生まれるというふうに−つは考えます。そういうおそれがあると考えていいと思いま
す。
ただ、サッカーくじ法案の第三十条に、「センターは、国民に対し、スポーツ振興投票」、サッ
カーくじですね、「の実施及びその収益の使途に関する情報を提供する」というふうに明記され
ていますので、ともかくこれは情報企開法制定の機運を反映したものというふうに考えられます
が、これだけでは実は十分じやないんですね。
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三百億円の配分が適正に行われるかどうか、どうチェックするのか。幾らディスクロージャ−
をしても質問権が与えられていないわけですね、我々に。建前として審議会で話し合いが行わ
れたとしても、それは正式な質疑じやありません。審議委員というのは国民が選ぶんじやなくて
省庁が選ぶわけですから。
省庁にへそくり予算が存在するということ自体が国会を軽視したものでありまして、すなわち
民主主義の原則を踏み外しているわけです。つまり、本来は我々が選んだ代表者が予算につ
いては審議するわけですから、省庁がその審議委員を選んで審議するというのは本来の民主
主義のあり方ではないということです。現在のままだと結局、これは情報公開で三十条にありま
すけれども、主務大臣に報告すれば事足れり、こういうことでありますね。
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したがって、例えば決算委員会への報告義務を明記するとか、そういう形で国会へフィード
バックできる仕組みを残すような条項を少なくとも入れていない限りは、ちょっとこれはおかしい
んじやないかと。そうじやないと不正がはぴこります。必ず利権の温床になります。というのは、
ほかの省庁のへそくり予算がどれほど不明朗にこれまで行われてきたかということ、僕の「日
本国の研究」という本をお読みいただければわかると思うんですけれども、それに書いてありま
す。ですから、もう少しそのあたりを勉強していただきたい。
それで、へそくり予算ということなんですね、サッカーくじというのはへそくり予算になると。予
算というのは国会で、つまり我々納税者、タックスペイヤーの一種の代表者が国会議員であり
まして、それはいわゆる会社で言えば株主総会みたいなものですね。しかし、これは何か取締
役会で子会社の経理内容を簡単にしゃんしゃんで終わらせちゃうという構造と似ていますの
で、タックスペイヤーにとっては国会が株主総会ですから、株主総会できちんと予算とかそうい
うお金の問題をやってもらわないと困るということであります。基本的な考え方はそういうことで
あります
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第142回 参議院 文教・科学委員会にて
(1998年2月12日)
○参考人(猪瀬直樹君)
2007年05月16日
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